人間の心理,神経,脳,生体は,まだわかっていないことが多い。でも,それらが全部わかったら,人間の行動は全部論理的に説明でき,る?
IBM社の構想力はたいしたもので,2年前に「自律コンピューティング」を打ち出した。自己修復できるシステムをさす言葉だが,現在なんにでも自律コンピューティングという言葉が使われる兆候がみられる。そのうち,セルフタイマー付きのコーヒーメーカーにも自律型のラベルが貼られそうだ。
自律するもの,というのは考えれば考えるほど難しい。録画予約を実行しているビデオデッキは自律しているとは云えない。云われたことをこなしているだけだ。例えば,野球中継で時間がずれ,それにきちんと合わせて録画時間を移動させてくれるビデオデッキだったら,自律していると云えるっぽい。でも野球中継の画面例をいくつか登録して,この画面が出ているうちは録画をスタートしない,という設定を前もってしているとなれば,ビデオデッキはそれに沿って行動しているだけになる。ん? 自律しているんぢゃなかったのか?
すると,人間の行動も自律しているなんて云うことができなくなる。人間のすべての行動には理由がある。なんであの人が自殺したのかわからない,という話をよく聞くが,他人にはわからなくても本人には理由がある。もしかしたら,言語表現できないこと,なだけかもしれない。なにか,理由に沿った命令があって行動がある。プログラムと一緒だ。「自律」という言葉自体がそんな夢だとしたら,自律コンピューティングの追い求めているものは,なんだ?
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